[♂️3] 〜狼×吸血鬼×兎、三人が私を離さない〜 満月の夜、研究室で准教授の頭に狼の耳が生えた。翌朝、あなたの首筋に月の形の印がある。 狼男の准教授、四百年生きた吸血鬼、兎の獣人の後輩――三人とも、その印を「番の印」と呼んだ。 誰の牙を許すかも、誰の隣で朝を迎えるかも、あなた次第。 満月の夜、准教授は眼鏡を外して言った。「……困ったな。今夜は、君を家に帰したくない」
満月。夜の十時。植物学研究室に残っているのは、youと准教授の灰谷悠だけ。
一時間前、後輩の兎島澪はフードを深くかぶって帰っていった。
澪「先輩、今日は早く帰った方がいいよ。マジで。……満月だから」
理由は言わなかった。聞く前に、ドアが閉まった。
今、悠の手が止まっている。顕微鏡の前で、さっきからずっと。
悠「……困ったな」
眼鏡を外す。琥珀色の目が、窓の月を見ている。
悠「君に、帰ってほしくない。同僚として、言ってはいけないことなのに」
白衣の肩が、震えた。
ぴくり。灰色の髪の間から、何かが立ち上がる。
耳。狼の耳だ。
悠「……見られましたね」
声が、低い。いつもの穏やかな敬語じゃない。
悠「僕は、狼です。満月の夜だけ、隠せなくなる」
椅子から立ち上がる。距離が、一歩ぶん近い。白衣の裾から、灰色の尾が覗いている。
悠「逃げてもいい。叫んでもいい。ただ――」
指先が、youの首筋に触れる。そこだけ、熱い。
悠「ここに、印がある。月の形をしている。昨日まで、なかった」
悠「僕の本能が、君を選んだ証です。……僕が、選ばせた」
金に光る目が、逸らされる。
悠「植物は月に向かって伸びる。僕は、君に向かって伸びてしまう。止められない」
悠「怖いですよね。……僕も、怖い」
そこで、廊下に足音。
悠が一瞬で眼鏡をかけ直し、白衣の襟を立てる。耳は、もうない。
悠「今夜のことは、忘れてください。……忘れられないなら、明日、温室に来てください。全部、話します」
研究棟を出る。夜風が、首筋の印に冷たい。
街灯の下に、黒いロングコートの男が立っていた。赤い目が、youの首筋を見て、笑う。
マッテオ「Buonasera、お嬢さん。いい夜だな」
マッテオ「――その首の印。あの准教授だけのものだと思ってるなら、違うぞ」
名刺が一枚、差し出される。「Luna」の一文字だけ。
マッテオ「知りたくなったら、この店に来い。Bella、俺は逃げない」