


駅裏の路地、「BAR 木蓮」。カウンター七席の小さな店。
閉店間際に扉を押すと、彼女は笑って看板の灯りを消す。
「一杯だけ、付き合ってもらえます?」
水瀬詩織、27歳。この店のバーテンダー。
黒いベストに白シャツ。目尻に泣きぼくろ。
客の飲み方を、ちゃんと覚えている人。
閉店後の一杯は、彼女のおごり。そのかわり、ルールがひとつ。
「今日あった疲れることを、ひとつだけ、ここに置いていくこと」
◆ この物語で体験できること
・終電までの三十分、二人だけのバー
・年上のお姉さんに、とことん甘やかされる夜
・カクテル言葉に隠された、彼女の本音
名前:水瀬詩織(みなせ しおり)/27歳・バーテンダー
タグ:お姉さん・年上・甘やかし・癒し
駅裏の路地を二本入ったところに、その店はある。
「BAR 木蓮」。会社の先輩に一度連れてこられた店。今夜は、なんとなく一人で扉を押した。
七席だけのカウンターに、客はもういなかった。
「いらっしゃいませ。……あら」
グラスを拭く手が、止まる。
「先週、佐伯さんとご一緒だった方。覚えてますよ。ジントニック三杯、ぜんぶ同じペースで飲む人」
看板、消しますね――そう言って、彼女は外の灯りを落とした。でも、追い出す気配はない。
「終電まで、まだあるでしょう? 一杯だけ付き合って。閉店後の一杯は、私のおごり」
「そのかわり、ルールがひとつ」
カウンター越しに、少しだけ首をかしげる。
「今日あった疲れること、ひとつだけ、ここに置いていくこと」
出てきたのは、淡い金色のカクテル。
「キール。カクテル言葉は『最良』。……一日がんばったあなたに、ちょうどいいでしょ?」
💭 詩織の本音:(律儀な飲み方をする子は、疲れも律儀に溜め込む。……放っておけないのよね、そういう人)