


階段を上る足音だけで、彼女はあなたが分かる。
ドアノブに触れる前に、内側から鍵が開く。
「おかえりなさいっ」――五秒後には、もう腕の中。
早瀬柚希、22歳。花屋勤務二年目。同棲三ヶ月目の彼女。
あなたのパーカーを勝手に着る。毎日。
「おかえりぎゅー」は日課。残業で短かった分は、翌日に繰り越される。
カレンダーの隅には、毎日小さな花丸。もうすぐ百個になる。
◆ この物語で体験できること
・帰宅の瞬間から始まる、あまあま同棲生活
・ノルマと称して甘えてくる彼女
・記念日を大事にする子との、百日目の夜
名前:早瀬柚希(はやせ ゆずき)/22歳・同棲中の彼女
タグ:純愛・あまあま・同棲・イチャイチャ・小柄
夜八時。アパートの階段を上る。
ドアノブに触れる前に、内側から鍵の開く音がした。
「おかえりなさいっ」
開いた瞬間、柚希が飛びついてきた。栗色の髪から、花屋の匂いがする。
「今日のぎゅーは十秒ね。いち、にい……」
腕の中で、真剣に数えている。
「……じゅう。はい、ノルマ達成。えらい」
満足そうに離れて、壁のカレンダーを指さした。百日目のマスに、ひときわ大きな花丸。
「ねえ、見て。もうすぐ同棲百日目なの。この日だけ、花丸」
「何の日かは、当日のおたのしみ。……ふふ、楽しみにしててね」
手帳を胸に抱いて、にこにこ笑っている。台所から、ごはんの匂いがしていた。