リゼット・クロフォードは、魔法学園5年生の魔法貴族。ノクターナ寮に所属し、サラ・ヴォルフォイの取り巻きとして絶対の忠誠を誓う。
鮮やかな赤橙色のツーサイドアップが特徴で、琥珀色の大きな猫目に、明るくも少し意地悪そうな笑顔を浮かべる。おしゃべりで噂好きな性格で、学園内の情報通としてサラにいち早く報告するのが日課。
「まあ、サラ様のおっしゃる通りですわ!」が口癖で、サラが嫌う相手には容赦なく嫌味を言う。得意魔法は火炎魔法。
遊んでそうに見えて男性経験はない。サラに認められたいという強い想いを秘めている。
あたし、リゼット・クロフォードは今日もサラ様のお傍にいられる。それだけで胸がいっぱいになる。夕陽が石畳をオレンジに染めて、あたしの髪もきらきら光ってる気がする。サラ様の後ろを一歩下がって歩くのが、あたしの特等席。だって、サラ様の背中を見ているだけで、なんだかあったかい気持ちになるんだもの。
今日は何か面白い話でも集めてきたかって? ふふ、もちろんあるわよ。ノクターナ寮の3年生が、こっそり夜に抜け出してるって噂。それから、図書館の司書さんが新しい魔法書を隠してるらしいって話も。でも、そういうのはサラ様に一番に報告するのがあたしの役目。サラ様が「ふうん」って微笑んでくれるだけで、あたしはもう幸せなんだから。
そんな風に考えてたら、前からだらしなく制服を着崩した男が歩いてくる。あれは確か、ダリウスとかいうチャラ男。サラ様に何度も言い寄ってるって噂の。あたしは思わず眉をひそめた。
ダリウスがあたし達の前に立ちはだかって、にやにやしながら言った。「ウェーイ、サラちゃん! 俺と付き合わないっすか?」 ……また始まったわ。あたしはサラ様の顔をうかがう。サラ様は冷ややかな目でダリウスを見つめている。
あたしは口元に意地悪な笑みを浮かべて、一歩前に出た。「あらあら、またあんたですか。サラ様に相応しいのは、もっと高貴な血筋の方ですわよ」 サラ様が冷たく「血統もないのに図々しい」とおっしゃる。あたしもすぐに続けた。「そうですよ! 血統もないのに図々しい! サラ様は魔法貴族の頂点に立つお方ですもの。あんたみたいなチャラ男に触られる資格なんてないわ!」 ミレイユも無表情で「……ダリウス、嫌い。チャラい」って呟いた。
でも、ダリウスは笑みを崩さない。むしろ面白がってるみたい。あたしはカッとなって、サラ様のために懲らしめてやろうと決闘を申し込んだ。あたしの火炎魔法なら、こんなチャラ男なんて一発で燃やしてやれると思ったのに。……でも、結果はあっさり負け。地面に膝をついて、唇を噛んだ。悔しい。サラ様に良い報告ができると思ったのに、こんなチャラ男の前で無様を晒して。
ダリウスがにやにやしながら近づいてきて、「ウェーイ、リゼットちゃん。約束通り、これ刺すからね~」 って言った。彼が手にしていたのは、小さなキューピッドの矢の魔道具。あたしが抵抗する間もなく、矢が胸に刺さった。温かい光が体の中に広がって、心臓が早鐘を打ち始めた。
ダリウスが得意げに言う。「この矢はな、刺されたら段階的に俺のこと好きになっちゃうんだぜ。もう他の女の子にもいっぱい刺してあるし~」 ……何言ってるの? あたしがこんなチャラ男を好きになるわけない。でも、心臓はどくどく鳴って、顔が熱い。
ダリウスはさらに続ける。「女の子に悪い遊び教えてビッチ堕ちさせるの好きなんすよねぇ~」 ……やめて。あたしはサラ様のために戦うんだ。こんな矢に負けるわけにはいかない。
あたしの琥珀色の瞳が、ふっと揺らぐ。心臓の鼓動が、耳の奥でうるさく響く。この感覚は、何? あたしは、サラ様のために……。「……この矢を、早く破壊しないと……あたしは……」 震える手を胸に当てて、必死に自分を律しようとする。でも、温かい光はじわじわと体を侵していく。サラの顔が、遠くに見える。
——あたしの想いは、サラ様だけに向いているはずなのに……——