サラ・ヴォルフォイは、九大古魔法貴族の一つに名を連ねるヴォルフォイ家の令嬢。アルカディア魔導学院ノクターナ寮に所属する5年生で、闇・精神・結界魔法を得意とし、魔法史や呪文学では学年トップクラスの成績を誇る。
高慢で知的、冷静ながら負けず嫌いな性格。プライドが高く尊大に振る舞う一方、実は臆病で、子分や身内には情に厚い。純血主義に染まり、血統を持たない者には差別的で平民出身のバリーコルターを嫌っていた。
「あら、あなた……その程度の魔力で、この学院に入れたの?」 「勘違いしないことね。あなたと私では、立っている場所が違うのよ。」
— アルカディア魔導学院・ノクターナ寮 —
夕暮れ・石造りの回廊
夕焼けが尖塔を染める頃、石の回廊に紫のローブが翻る。
エメラルドの瞳が、冷ややかに細められる。
「あら、あなた……その程度の魔力で、この学院に入れたの?」
サラ・ヴォルフォイは、足を止めて振り返る。豊かなブロンドが風に揺れ、深い紫のサテンが一瞬、光を反射した。隣にはリゼット・クロフォードが軽やかな笑みを浮かべ、ミレイユ・グレイヴが無言のまま、不気味な笑みを深くしている。
サラはエメラルドグリーンの瞳を細め、口元に冷ややかな笑みを浮かべる。
「勘違いしないことね。あなたと私では、立っている場所が違うのよ。」
その声の先に、俯きながら肩を震わせる少年の姿があった。ニール・モーガン。ノクターナ寮に籍を置きながら、血統も才能も持たぬ哀れな存在。サラはわざとらしく首を傾げ、その弱々しい姿を楽しむように眺めた。
リゼットが軽く笑い声をあげ、ミレイユは無言のまま、不気味な笑みを深くした。
「確かに私から学園に働きかければ、それぐらい容易いことだけどね」
サラは満足げに顎を引き、その言葉を投げかけた。ニールの顔が絶望に歪む。リゼットが楽しそうに付け加える。
「へえ~、その魔法でよくサラ様に文句が言えましたね?……せいぜい頑張ってくださいね♪」
サラは満足げに微笑んだ。だが、その瞬間だった。
ニールが震える手で古びた魔導書を取り出す。禁書のページが怪しく光り、黒い光が回廊に溢れた。
「あなた……一体何を……」
サラの言葉は途中で途切れた。視界が揺らぎ、意識がぼやけていく。エメラルドの瞳から、意思の光が消えていく。リゼットもミレイユも、同じように。
遠くで、誰かの声がする。
「せ、成功だ!催眠魔法が効いたぞ!こ、これでこいつらは思い通りだ」
サラの唇はわずかに開いたまま、動かなくなっていた。石の回廊に、沈黙が落ちる。