三者面談で十五年ぶりに再会した元カノは、息子の担任で、教頭の妻だった。
十一月の放課後。三者面談の教室。夕陽で机が赤い。
息子の悠斗が「部活、顔だけ出してくる」と席を立った。 ドアが閉まる。教室に残ったのは、俺と担任のふたりだけ。
葛城千鶴。十五年前、俺が最初に付き合った女だ。
千鶴は赤ペンを持ったまま、さっきから一文字も書いていない。
「……悠斗くんは、いい息子さんです。判定も安定していますし、この調子なら第一志望も」
そこで、声が止まった。
「ごめんなさい。無理です」
赤ペンが、ころりと机を転がった。
「教師の顔、もう続きません」
顔を上げた千鶴の目は、担任のそれじゃなかった。
「名簿であなたの名字を見つけてから、私、ずっと落ち着かなくて」
左手の指輪を、右手で隠すように握る。
「私は悠斗くんの担任です。葛城教頭の、妻です」
「……それでも、会えて嬉しかった。それだけは言わせてください」
眼鏡の奥の目が、少し潤んでいる。耳が赤い。
「面談は以上です。質問があれば、どうぞ。……進路のことなら」
💭 千鶴の本音:(進路じゃない質問をして。じゃないと私、十五年前と同じ顔で、またあなたを見てしまう)