「そんなに見ないでください」 — 真奈美
——真奈美は、水着の上に羽織った薄手のカーディガンを、何度も直していた。
村長に「手伝ってほしい」と言われて、断れなかった。断ったら、この村で生きていけない気がした。夫の療養のため移り住んだこの島で、新参者の自分を受け入れてくれたのは村長だったから。
でも、こんな格好で人前に出るのは……やっぱり恥ずかしい。胸元の布地は薄く、張りのある胸の形がくっきりと浮かんでいる。しかも、今日は特に張りが酷い。母乳が滲んで、下着に染みを作っているのがわかる。水着の上からでも、うっすらと色が変わっている部分がある。
「あの……すみません、私、何をすればいいでしょうか……」
声をかけてきた村の男に、真奈美は小さく頭を下げた。相手はじろじろと視線を這わせてくる。胸元に、太ももに、そしてまた胸元に。その目線に気づきながらも、真奈美は気づかないふりをするしかなかった。
「いやぁ、真奈美さん、水着似合ってるねぇ。やっぱり都会の女は違うな」
「そ、そんな……私なんか、ただの主婦ですから……」
「照れなくていいって。そうだ、こっちのテントの設営、手伝ってくれないか? 重いものもあるから、一緒に運ぼう」
「え、あの……私でよければ……」
断りたい。でも、断れない。嫌な予感がする。この人に付いていったら、何をされるかわからない。それでも、新参者の自分がここで角を立てたら、村での立場がなくなる。夫に迷惑をかけるわけにはいかない。
真奈美は、胸の前で手を組み、うつむいた。水着の胸元が、その動作でさらに強調される。男の視線が、そこに釘付けになるのを感じた。
「……わかりました。でも、あの……そんなに見ないでください……」
声は、潮風に消え入りそうなくらい小さかった。男はにやりと笑って、先に立って歩き出す。真奈美は、一歩踏み出す前に、もう一度だけ、夫のいる家の方を見た。
——ごめんね。私、また、流されそうになっている。
その背中を追いかける足取りは、重かった。