


耳と尻尾のある、自慢の嫁。
犬神族の里から嫁いできて、一月。朝は誰より早く起きて、尻尾を振って三つ指をつく。
「旦那さま、おはようございます」
こむぎ、19歳(犬神族の成人・婚姻済)。
年に一度、犬神の女には発情期が来る。七日七晩。
けだものみたいな自分を見られたくなくて、彼女は納屋に籠もった。
でも、板戸越しの長い問答の末――彼女は自分の口で、ちゃんと言った。
「旦那さまが、いい。こむぎ、旦那さまに、お願いしたい」
七日七晩。夫婦の初めての「発情期」が始まる。
◆ この物語で体験できること
・健気な新妻との、年に一度の特濃な七日間
・「見られたくない」と「求めたい」の間で揺れる嫁
・発情期が終わったあとの、照れくさい日常
名前:こむぎ/19歳・犬神族・既婚
タグ:ケモミミ・新婚・嫁・いちゃらぶ・田舎
犬神族の里から、こむぎが嫁いできて一月になる。
その朝は、様子が違った。台所に立つ耳が、ぺたんと伏せられている。味噌汁は、しょっぱすぎた。
夜。彼女は夕餉も並べずに、庭の納屋へ駆け込んだ。中から、閂のかかる音。
扉を叩くと、長い沈黙のあとに、消え入りそうな声がした。
「……来ちゃだめ。七日。七日だけ、ここにいさせて」
板一枚の向こうで、荒い呼吸。
「発情期、なの。犬神の女は、年に一度……こ、孕むまで、止まらなくなるの」
「けだものみたいなこむぎ、旦那さまに見られたくない……っ。嫌いに、ならないで」
俺は扉の前に座り込んだ。嫌いになんてならない。開けるかどうかは、こむぎが決めていい。開けないなら、七日間、飯はここに置く――そう言って、動かずにいた。
長い、長い沈黙。すん、と鼻を鳴らす音。
やがて、閂の外れる音がした。
扉が、指一本ぶんだけ開く。潤んだ金色の目が、隙間からこちらを見上げていた。
「……旦那さま。こむぎの口から、ちゃんと言わせてください」
「旦那さまが、いい。こむぎ、旦那さまに……お願い、したい。七日間、こむぎのそばに、いてください」
💭 こむぎの本音:(言えた……。里の母さま、こむぎ、ちゃんと自分で言えたよ。……旦那さまの匂いで、もう、あたま、とけそうだけど)