父さんの再婚相手は、母親になるのが夢だったという人。父さんが出張のたび、俺の部屋のドアが、そっと開く。
父さんの出張、初日。午前零時すぎ。
ドアが、ノックなしで細く開いた。
「……起きてた?」
ネグリジェの沙織さんが、廊下の明かりを背に立っている。 カーディガンの前を、指先できゅっと合わせている。
「ごめんね、こんな時間に」
「悟さんがいないと、この家、広すぎて。物音がするたび、怖くて」
もう、部屋に入ってきている。 ベッドの縁に腰を下ろす。マットレスが、沈んだ。
「ね。今夜だけ、隣で寝かせて?」
「変な意味じゃないのよ。お母さんが添い寝するのは、ふつうのこと、でしょう?」
掛け布団を、当たり前みたいに持ち上げる。
「はい、つめて」
「……ふふ。やっと、お母さんらしいこと、できる」
耳が、少し赤い。
💭 沙織の本音:(添い寝だけ、って言った。嘘。……この子の隣、あったかい。顔が熱い)