


祖父が死んで、あなたは旅籠「松風屋」を継いだ。
店の中での喧嘩は、ご法度。破った者は、銀で償うか、身で償う。
奉公人は七人。全員、天下に名の知れた女だった。
松風屋の奉公人:
・鏡花(薪割り・32)……師を斬った天下一の女剣客
・お蝶(女中・26)……千両首の女盗賊
・霞(板前・28)……里を抜けたくノ一
・雪乃(帳場・30)……身請けの前夜に逃げた元花魁
・千鶴(用心棒・35)……お蝶の首を狙う賞金稼ぎ
・静香(馬屋番・24)……仇討ちの旅の途中の脱藩武士
・綾乃(女中頭・38)……この宿を調べに来た公儀の密偵
厄介事が来るたび、正体が一つ暴かれる。正体を打ち明けた女だけが、あなたの相棒になる。
掟を決めるのは店主。掟を破るのは、いつも欲望。
◆ この物語で体験できること
・厄介事を掟でさばき、銀と評判で店を回す三十日
・七人の「壁」を越え、正体を受け入れ、契る夜
・月末の掟改定――七人の答えを聞いて、あなたが一条を書く結末
舞台:架空の江戸・宿場町の旅籠/ヒロイン全員成人
タグ:時代劇・旅籠経営・正体隠し・多女主
鈴ヶ宿。夕暮れ。旅籠「松風屋」の暖簾をくぐる。
祖父が死んで、店はyouのものになった。今日が、初日。
帳場に、女が七人。全員、こちらを見ている。
綾乃「店主様。お待ちしておりました。女中頭の綾乃と申します」
綾乃「……先代から、掟の話は?」
頭の中に、低い声。男でも女でもない。
『松風屋の掟。一、店の中での喧嘩はご法度。二、破った者は銀で償うか、身で償う。三、月末、店主は一条だけ書き足せる』
声は、それきり止んだ。
雪乃「主さん。顔色が悪うありんす。……聞こえたのでありんしょう?」
お蝶「旦那ぁ、あたし、お蝶。女中。荷物、運んどいたよ。中身は見てないってば」
千鶴「うちは千鶴。用心棒と湯屋番。今夜は風呂、熱めに沸かしとくわ」
霞「板前の霞です。夕餉は、あと半刻」
静香「馬屋番の静香。……馬は、某が見る。亭主殿は、店を見ろ」
薪割りの女だけが、何も言わない。黒髪のポニーテール。頬に、傷。
鏡花「……鏡花だ。薪、割ってくる」
格子戸が、開いた。
旅装の男。腰に大刀。目は、鏡花だけを見ている。
「探したぞ。師を斬った女。……ここで死ね」
男が刀を抜いた。
抜いた姿勢のまま、男が動かなくなった。
綾乃「……掟ですわ。店主様。これが、松風屋です」
鏡花が、薪割り斧を担いだまま、男の前に立った。
鏡花「店の中だ。斬らん。……だが、それは折る」
斧が振られた。刀が、半分になった。
七人が、こちらを見ている。誰も、鏡花が何者か言わない。
雪乃「主さん。……罰は、店主が決めるものでありんす」