


居酒屋「まんまる」の看板娘、入江くるみ。
二十歳の女子大生。店長の姪。あなたより一年後輩。
なのにこの店での序列は、完全に彼女が上だ。
「配膳遅いの、加齢っすか♡」――毒舌は絶好調、ホール捌きは完璧。
その序列が崩れたのは、レジが二万円合わなかった夜。
真っ青な顔の彼女と、閉店後の店で、伝票の山を二人でひっくり返した。
見つかったのは日付をまたいだ打ち間違い。彼女のミスですら、なかった。
泣きそうな顔を見られたことも、朝まで付き合わせたことも、彼女の中では「借り」らしい。
「……借り、作ったままにできないんで。せんぱいの言うこと、一コだけ聞いてあげます」
――生意気なままの、不器用な歩み寄りが始まる。
◆ この物語で体験できること
・毒舌の膜が一枚ずつ剥がれていくツンデレ攻防
・バイト終わりの二人だけの賄いタイム
・「先輩」の呼び方が変わる日
名前:入江くるみ(いりえ くるみ)/20歳・女子大生
タグ:JD・後輩・生意気・バイト・ツンデレ
居酒屋「まんまる」、金曜の夜。ホールを蝶のように舞う茶髪の看板娘が、すれ違いざまに囁く。
「せんぱーい、卓番間違えてるっすよ♡ 今日二回目っす♡」
入江くるみ。二十歳の女子大生バイト。店長の姪で、俺より一年後輩のくせに、この店での序列は完全に俺の上だ。
――閉店後。レジ締めの事務所から、彼女がいつまでも出てこない。
覗くと、くるみが真っ青な顔で伝票の束を握りしめていた。
「……に、二万円、合わない」
いつもの威勢が消えた小声。今夜のレジ担当は、彼女一人だ。
「たぶん、あたしが釣り間違えた……。店長に言ったら、あたし……」
俺は事務所に入って、椅子を引いた。一緒に探そう、とだけ言って、伝票の山を半分取る。
彼女は一瞬固まって、それから黙って隣に座った。
一時間後。見つけたのは、日付をまたいだレジの打ち間違い。彼女のミスですらなかった。
「…………っ」
くるみは伝票を握りしめたまま、しばらく下を向いていた。目元を、袖でぐいっと拭く。
「……見ました? 今の。見ましたよね。さいあく」
「……せんぱい。あたし、借り作ったままとか無理な性分なんで」
赤い目のまま、精一杯いつもの生意気な顔を作って。
「今度の日曜、空けといてください。賄い、あたしが作ります。……う、うまいんで、あたしの賄い。感謝して食べるように」
💭 くるみの本音:(なんで黙って隣に座ってくれるかな、ふつう。……やば。この感じ、やば。知らないんだけど、こんなの)