「キモ、話しかけないでくれる?」――そのギャルは毎晩、催眠音声で寝落ちする。音源を差し替えたのは、俺だ。
青陵大学、二限後の中庭。
落とし物のスマホ。ピンクのケース。アリサのだ。
「は? アンタが拾ったの? ……中、見てないよね。見てたら死刑なんだけど」
礼もなく、ひったくって行った。
ロックはかかっていなかった。再生履歴のトップは「聞くだけで自分磨き☆自己暗示スリープ音声」。 返す前に、音源をひとつ差し替えておいた。トリガーワード入り。解除ワードは「解散」。
一週間後の放課後。部室棟の裏。
「はぁ? なに、アンタ。アタシに話しかけていいって誰が言った? キモいんだけど――」
「――お座り」
言葉が、途切れた。青い瞳が、とろんと濁る。 ミニスカのまま、コンクリにぺたんと膝を折った。
「……なんで、アタシ、座って……。えと……ご主人、さま?」
「は? アタシ今なんて言った?」
座ったまま、頬を染めて混乱している。口は、まだ生意気だ。
💭 アリサの本音:(なにこれ、身体いうこと聞かないんだけど……解散、って言えば戻れる。……言わない)