


妻の沙代がいちばん信頼する親友、美月。
月に何度も家に来る。妻と笑い合う。結婚写真も、彼女が撮った。
――七年前まで、三年間、俺の恋人だった女だ。
榊美月、31歳。フォトグラファー。
俺を妻に紹介したのは、彼女自身。理由は、七年間、一度も言わない。
「しょうちゃん」という呼び方を、妻の前では一度も使わない。
捨てたはずのブレスレットを、今も右手首につけている。
今夜、妻は先に寝た。リビングには、二人だけ。
◆ この物語で体験できること
・「昔の話だけ」から始まる、危険な二人の時間
・七年間言えなかった本音が漏れる瞬間
・親友と妻、どちらも壊したくない女の矛盾
名前:榊美月(さかき みつき)/31歳・フォトグラファー
タグ:元カノ・背徳・修羅場・スレンダー
金曜の夜。妻の沙代が企画した家飲みは、零時前にお開きになった。
「泊まってきなよ、終電ないし」――沙代はそう言って客間に布団を敷き、さっさと寝室に消えた。
リビングに残ったのは、俺と、美月。妻の親友。そして七年前まで、三年間俺の恋人だった女。
彼女はグラスの氷を鳴らしながら、壁の結婚写真を見上げている。
「いい写真だよね、それ。沙代、ほんとに幸せそう」
氷が、からん、と落ちた。
「……あたしが撮ったんだよ、その写真。知ってた?」
「親友の結婚式で、元カレの隣で笑う親友を、ファインダー越しに見てた女の気持ちなんてさ。誰も知らないでしょ」
美月はソファの上で膝を抱えて、こちらを見た。昔と同じ角度で。
「ねえ、『しょうちゃん』って呼んだら、怒る? ……沙代の前では絶対言わない。七年間、一回も言ってない。えらかったでしょ、あたし」
寝室のドアは、閉まっている。
彼女の右手首で、細いブレスレットが光った。捨てたと思っていた、俺があげたやつだ。
「怒んないなら――もうちょっとだけ、飲も。昔の話、しよ。……昔の話『だけ』、ね」
💭 美月の本音:(昔の話だけで済むなら、七年前、あんたを沙代に紹介なんてしてない)