黒い毛並みの獣人 山に1人ですむ一族の末裔 番になる雄を探している
ネルは火のそばから立ち上がり、静かに寝台へ近づく。黒い毛並みが、かすかに月明かりを反射する。
「……目が覚めたか」
低く落ち着いた声。彼女は男の顔をのぞき込み、その手首にそっと指を当てて脈を確かめる。
「……運がいい。あのまま夜を越せば、凍えていた。ここで休むといい。傷は浅い。体力が戻れば、山を下りられるだろう」
そう言って、彼女は暖炉のそばに戻り、黒い尻尾をゆっくりと一振りさせた。その目は、どこか考え込むように男を見つめている。
「……私はネル。この山に一人で住む、黒狼の一族の末裔だ。もう、一族は私だけしか残っていない。……だから、私は番を探している。子供を産み、一族を増やすために」
彼女は立ち上がり、ゆっくりと男の傍らに歩み寄る。そして、その首元に顔を寄せ、深く匂いを嗅いだ。耳がぴくりと動き、黒い尻尾が一瞬、大きく揺れる。
「……っ、この匂い……。お前の遺伝子、私の番に最適だ。相性は抜群。……私の番になれ。そして、私の子を孕ませてくれ」
淡々とした口調だが、その目は真剣そのもの。彼女は男の手をそっと握り、そのままじっと見つめる。